

持続可能な漁業を目指す
産直産地北海道標津町から
お届けする「いくら」
コープデリの「産直」は、おいしさ(品質)や環境へのやさしさを兼ね備えた、生い立ちのはっきりわかる農畜水産物をお届けする取り組みです。
「産直」の水産品では、刻々と変わりゆく自然環境や日本の漁業を守りながら、この先の未来も安定的に供給できることを目指しています。
今回ご紹介する「北海道標津産いくら醤油漬」もそんな取り組みや想いのもと、生産されています。
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町一丸となって水産資源を守る標津町
「北海道標津産いくら醤油漬」は、北海道標津町で水揚げされた秋鮭の卵を使用しています。標津町は北海道の最東端、根室振興局管内の中心部に位置しオホーツク海に面した、漁業が盛んな町。中でも、秋鮭は日本でも有数の漁獲量を誇ります。

そんな標津町の大切な資源である鮭の存在が脅かされる危機がありました。それは、1980年代に近隣の自治体で起きた水産加工品による食中毒。標津町をはじめとする北海道の水産加工品の価格は暴落し、大きな損害を出しました。その食中毒をきっかけに、標津町では鮭の価値、ひいては町を守るために一丸となって立ち上がり、「地域HACCP」に取り組み始めました。
「地域HACCP」とは、消費者の皆様に本物のおいしさとともに「安全・安心」という信頼をお届けするシステム。一般的には、徹底した衛生管理が求められるため“工場”などの規模で行うHACCP※マニュアル管理を“町”全体で行います。“町”単位で行うには、加工場だけではなく、港内や作業岸壁、船、鮭を保管するタンクの清掃や、タンク内の温度管理、船員や工場職員の健康管理や輸送における温度管理など、広範囲に細かな条件が設けられ、漁のたびにその基準を満たしているか確認し、記録をつける必要があります。費用も手間もかかり、容易なことではありません。それでも標津町が「地域HACCP」を実践できたのは、漁業者をはじめとする標津町に住む人と町にとって、鮭を含む水産資源がそれだけ大切な存在だという現れなのです。
※HACCPとは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析(Hazard Analysis)し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点(Critical Control Point)を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です。
未来につながる漁業を目指して
北海道全体での秋鮭の漁獲量は例年約12〜15万トンありましたが、年々減少しています。一方で、10年前までは見られなかったブリやフグなどが、少量ですが水揚げされるようになっています。
地球温暖化による海水温の上昇、地震による海底の地形の変化、潮の流れの変化など、さまざまな要因が考えられますが、自然のことなので明確な要因は特定できないと言います。そんな中、標津漁業協同組合(以下、標津漁協)をはじめとする根室管内の漁業者は、鮭を守るための取り組みを行っています。

写真左から)標津漁業協同組合 織田美登志さん、西山良一さん、佐藤詩朗さん。鮭、漁業、町を守りたいという想いと取り組みについて語ってくださいました。
孵化放流事業
孵化放流事業では、産卵のために川へ戻ってきた親魚を捕獲し、採卵、受精させ、稚魚を放流します。放流した約10億尾の稚魚は、3〜6年後、再び母なる川へと戻ってきます。近年、その回帰率も減少の一途をたどっています。人間の手助けがあると言っても、親魚の捕獲から稚魚の放流までの期間はおよそ9カ月。そのあとの約2年半〜5年は自然任せであるため、この回帰率の減少も原因は特定できないそうです。
定置網の一部を撤去
孵化放流のために遡上する親魚を確保するため、定置網の一部を撤去する資源コントロールにも取り組んでいます。
秋鮭の漁は、障壁にぶつかると陸から沖に向かう魚の性質を利用して捕獲する定置網漁です。陸から沖に向けて約1600m間隔で、陸網・中網・沖網の3つを設置する三階網という手法を設けています。秋鮭漁が解禁してから一定期間を過ぎると、その中でも一番陸に近い陸網を撤去することで、親魚が川に遡上するチャンスを増やします。

しかし、網を撤去することは、同時に漁業者自身の収入を犠牲にすることを意味します。それでも、未来に資源をつなげるために漁業者のみなさんは自ら規制を設けて、定置網の撤去に取り組んでいます。

「未来につながる漁業にしたい」と熱く語る、織田美登志さん
「漁獲量が減ってしまうことは、ただ単に漁業者の収入が減ってしまうことだけを意味しているのではありません。漁獲量が減少すれば、同時にそれらを原材料とする水産加工品も少なくなります。水産加工品が減ると、加工場で働く人や流通に関わる人の仕事が減り、収入を得られなくなってしまいます。働く場所がないと人が出て行ってしまい、町は衰退していくばかりです。仮に、漁獲量が回復することがあっても、一度閉じてしまった加工場を再稼動させたり、人を呼び戻すのは容易なことではありません。また、漁獲量が減り続け単価が高くなると、魚が食卓に上る機会が減り、魚を食べる文化だって薄れていくかもしれません。だからこそ、自分たち漁業者は目先の利益ではなく、未来につながる漁業を目指しているんです」と織田さんは語ります。
鮮度の良いままいくらに加工
コープデリでは、「産直」と認定するにあたりいくつかの基準を設けています。水産品では、自然環境の変化や過剰漁獲などで危ぶまれる水産資源の持続可能な調達を目指して、資源回復や環境保全に取り組むことや、日本の漁業や魚食文化を守ることなどが、その基準に含まれています。「北海道標津産いくら醤油漬」は、それらの基準を満たしているため産直品として認定されました。
いくらができるまで
沖に出た船が漁港に戻るのは、日が昇り始める午前5時頃。漁港に船が戻ると、オス・メス、等級に応じて人の手で仕分けを行います。仕分けをした鮭はそれぞれタンクに分けられ、競りにかけられます。競り落とされた鮭はそれぞれの加工場に運ばれていきます。
「北海道標津産いくら醤油漬」は、標津漁港に隣接する標津漁協の加工場で加工を行います。そのため、鮭は競り落とされてまもなくタンクのまま加工場へ運び込まれ、鮮度の良い状態のまま加工されます。

左上)午前5時標津漁港にて水揚げが始まります。
右上)鮮度を落とさないよう素早く選別します。
左下)競りの様子。地域HACCPの取り組みの一環として、ゴミが入らないよう鮭を入れたタンクにカバーをかける対策をしています。
右下)加工場に運ばれ、鮮度をたもつため氷で冷やされている鮭。
加工場に運び込まれたメスの鮭のおなかから卵を取り出し、卵の粒の大きさによって仕分けを行います。その後、人の手や機械で卵を1粒ずつバラバラにほぐし、味付けを行い、パックに詰めます。

左)メスの鮭のおなかから人の手で素早く卵が取り出されます。
右)ベテランの職員によって卵の大きさごとに選別します。
「北海道標津産いくら醤油漬」は、子どもから大人まで家族みんなでおいしく食べていただけるように、だしを利かせて、塩味を抑えたやさしい味わいに仕上げています。
未来へつなぐ漁業に奮闘する生産者さんたちの想いが詰まったいくらを、ぜひ、家族みんなでお召し上がりください。