成長促進ホルモン剤
不使用。
良質な牧草で
丁寧に育てられた
ニュージーランド産牛
ニュージーランドは、優良品種を育てるのに適した冷涼な気候で、かつ厳格な検疫システムが整っている国。なかでもコープデリがお届けしている牛肉は、成長促進ホルモン剤は不使用、また、牧草を含め飼料はすべて分別生産流通管理済みのものを与えています。ニュージーランド産牛が育まれる環境と、生産者の肉牛にかける想いをお伝えします。
ニュージーランドという選択
コープデリではさまざまなお肉を取り扱っており、その中には国産のものも外国産のものもあります。外国産のお肉を買う時に気になるのは「どうやって育てられたんだろう」ということ。元々、日本で取り扱う輸入牛は、法律で定められた厳正な基準に基づき定期的に検査されています。その上で、コープデリではこれまで、外国産の牛肉に関して、成長促進ホルモン剤への不安や疑問の声を組合員さんからいただいていました。そんな声を受けて、成長促進ホルモン剤を使用していない輸入牛の生産国を探した結果、たどり着いたのがニュージーランドでした。
ニュージーランドは、国土面積が27万534㎡と日本のおよそ3/4の広さで、国土の約半分が牧草地となっている酪農・畜産大国です。人口密度が低い国の一つで、人口が約450万人であるのに対して、約374万頭もの肉牛を飼育しています。
日本からは9,000km、赤道を越えて飛行機で約11時間と遠く離れており、隣国のオーストラリアですら移動には飛行機で約4時間かかります。この地理的な隔絶と、国内の厳格な検疫システムによって、ニュージーランドはこれまで、BSEや口蹄疫などの深刻な家畜伝染病の発生が一度もありません。他国と離れていることが自然の防波堤にもなっているのです。また、肉牛の優良品種を育てるのには冷涼な気候が適しているとされており、その点でも好ましく、豊富な水源も兼ね備えています。これらの畜産国としての特徴は、組合員さんの求める輸入牛の生産国としてふさわしいものでした。
おいしい肉牛は牧草づくりから
肉牛の生産を手がけているのは、アンズコフーズ株式会社(以下、アンズコフーズ)。ニュージーランドの生産拠点をベースに、家畜の飼育から製品出荷までを一貫して行う独自の体制を確立し、世界各地の市場や消費者のニーズに合わせた食肉加工食品の製造・販売を行っています。そして、肉牛生産の拠点としてアンズコフーズが所有しているのが、自社農場・ファイブスター牧場。
ニュージーランドの畜産は、産業の根本になる牧草づくりから始まります。牛たちに食べさせるのは自然に生育している雑草ではありません。牧草は作物と同様に人の手で作られるのです。アンズコフーズの生産もこのプロセスに則っています。
牧草は大きく分けて2種類で、1つは、繊維質が多く含まれたイネ科の植物“ライグラス”。牛の胃の中の微生物の活動を促進する働きがあり、牛たちはこの微生物が作る短鎖脂肪酸という物質を主なエネルギー源としています。もう1つは、マメ科の植物“クローバー”。牛の発育と牛乳の生産に必要なタンパク質や、健康維持に欠かせないカルシウム・マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。同時にクローバーには、大気中の窒素を根に固定して土壌を肥沃にする働きもあります。これら2つの植物を中心にバランスよく育てることでニュージーランドの牧草地は作られています。
放牧するときは、特定の牧草地だけが疲弊しないように、牧草地をいくつかの区画に分けて牛たちを移動させながら肥育します。そうすることによって常に十分に育った牧草を与えることができます。そして牛たちは、クローバーなどの牧草が根に固定した窒素成分を、30%は栄養素として吸収し、70%は尿として排泄します。排泄された尿はやがて土壌の肥料として還元されます。こうして、栄養素が牛から土へ、土から牧草へ、そしてまた牛へと循環することで、1つのサイクルが成り立っているのです。
また、飼料と同様に大切なのが水資源です。生きものの体の根幹をなす水は、牛の育成にも欠かせないものですが、良質な牧草を育てるためにも非常に重要です。ニュージーランドは豊富な降雨量により、川や山脈からの伏流水など地下水資源に恵まれています。また、日本と同様に水道水がそのまま飲める、世界でも数少ない国の1つです。
ファイブスター牧場で肉牛の生産を手がけるイアン・イングリスさんは語ります。「しっかり管理しないと良質な牧草が育たず、牧草が悪いと牛の成育や品質に影響を与えます。でも、きちんとした管理を行えば、土地を荒らすこともなく、長年に渡って良質な牧草が育つようになります。それは環境を保護することにもつながります。ニュージーランドは他の国から遠く離れた島国。工業がきわめて少ないので空気もきれいで土壌汚染もなく、水資源も豊かです。他の国にはない豊かな自然のもとだからこそ、我々もプライドを持って生産ができるのです」。
適切に育てられた牧草は、タンパク質をはじめ多くの栄養素を豊富に含んでいます。質の高い牧草が、それを食べる牛たちの肉質を臭みの少ない良質なものへと育むのです。
お肉本来の味わいを食卓に届けたい
世界的に高品質な肉牛として評価の高い三大品種が「アンガス」「ヘレフォード」「ショートフォーン」です。そのうち、アンガス種とヘレフォード種、そしてこの2種の交雑種がニュージーランドの主要品種となっています。
一般的に牛たちは皆、生後1〜2年は牧草を食べて育ちます。その後、引き続き牧草で育てられる“牧草牛”と、飼料を穀物に切り替えて肥育牧場で育てられる“穀物肥育牛”とに分けられ、市場へ送り出すための最後の仕上げに入ります。
コープデリが取り扱うニュージーランド牛(穀物肥育牛)には、一般的な肉牛では予防的にも使用される抗生物質を実際に病気にかかったとき以外は使用せず、また、牧草を含め、飼料はすべて分別生産流通管理済みのものを与えています。元々深刻な伝染病とは縁遠いニュージーランド。その上、世界的にも珍しい太平洋に面した牧場で、海からの潮風が牧場内の空気を常に清潔に保つことで通常の病気の発生率も低く抑えられるため、抗生物質の使用は最低限で済むのです。成長段階に合わせて日に2回、大麦や小麦を中心とした穀物を与えます。
加えて、牧草牛・穀物肥育牛どちらの肉牛にも成長促進ホルモン剤を使用しません。その理由をファイブスター牧場のイアンさんはこう語ります。「成長促進ホルモン剤を投与することによって肉牛たちは成育が早くなり、大きくなります。生産者としては利益や効率が格段に上がるのですが、一方で、牛本来の自然な成長を遮ってしまうことにもつながります。弊社では、利益よりも牛にとってよい環境を作ることを大切にしているんです」。
成長促進ホルモン剤を使わずに肉牛を育成するためにイアンさんは、全頭の健康チェックを毎朝しています。また、気温の変化や降雨が続く時などの対応にも気をつかい、気温が低いときや寝床が雨で濡れた時は敷き藁をするなどの細やかな配慮で、牛のストレスを減らすことを心がけながら、その時に一番よい環境を用意するようにしています。
赤身の多い肉質で深い味わいと香りが感じられる牧草牛。適度に脂身のサシが入った穀物肥育牛。さまざまな努力によってニュージーランドの肉牛は、秘められたお肉本来の味わいを損なうことなく広大な自然の中で存分に育まれて食卓まで届けられるのです。