ヒトとコトと

商品に携わる人と想い、伝えます。

日本の米づくりを応援したいという気持ちから始まった「お米育ち豚プロジェクト」 気になります、お米のこと。

豚に食べさせるお米(飼料用米)を作り、そのお米で育てた産直豚肉を組合員さんへお届けする、生産者とコープデリが共同で行っている「お米育ち豚プロジェクト」。2018年に10周年を迎えました。国内で収穫したお米で豚の飼育をすることで食料自給力を上げ、飼料用米を作ることで田んぼを未来へとつなげます。

お米がある食卓、ずっと続くといいな。

スーパーに行くとたくさんの食材が売っていたり、街にはレストランやファストフードがひしめき合い、食べ物が溢れているように感じられる日本。
しかし、米の消費量が減り、肉・油の消費が増えている食生活の変化に、国内の食料生産が十分に対応できず、今や、カロリーベースでは約6割の食料を海外から輸入している状況です。

もしも、輸入先の生産国が異常気象や災害に見舞われて不作になってしまったり、複数の国が同じ食料を買いつけて価格が高騰するなど、急に輸入がストップしてしまったら、日本の食はどうなってしまうのでしょうか。このような問題を考えて、未来の日本の食卓にも家族の笑顔をつなげるために、コープデリが行っている食料自給力向上の取り組みのひとつが、「お米育ち豚プロジェクト」です。

生産技術の進歩でお米の生産性が上がったのに対し、食生活の変化でお米の消費量が減ったことや、生産者の高齢化によって、多くの田んぼが休耕田になりました。
一度米づくりをやめた田んぼを再開させる「復田」は、技術・コスト・土地利用の権利などの課題が多く、簡単にはできません。また、再開できたとしても、数年間はお米の質や収穫量が安定しないため、生産者への負担が非常に大きくなります。
もしも、食料の輸入が急にストップしてしまい、国内でお米を作ろうということになっても、すぐには作れないのです。
この復田のむずかしさに加えて、生産者の高齢化が進み、後継者へ技術が引き継がれないことも考えると、「一度でも田んぼを失う」ことは、そのまま「日本の米づくりが衰退してしまう」ことにつながりかねません。

一方、畜産の現場でも、飼料を輸入に頼っている現状があります。
カロリーベースの食料自給率では、豚・牛・鶏などの畜産物に輸入飼料を使用して生産した場合は、国内で養畜しても自給率に換算されません。もしも飼料の輸入が途絶えた場合、畜産物を国内で生産できなくなることが考慮されているからです。
このように日本の食卓が抱える課題に、コープデリはなにができるのだろうか。
その取り組みのひとつが「お米育ち豚プロジェクト」です。

豚がお米を食べると、
どんないいことがあるの?

※写真はイメージです

「お米育ち豚プロジェクト」は、米づくりをやめる予定になっていた田んぼを、休耕させずに飼料用米を作り、その飼料用米で養畜を行う取り組みです。生きた水田を維持しながら、そこでとれた飼料用米で育った豚を食べることで、安定した国内食料の確保へとつなげ、国内の食料自給力を向上させることにも貢献します。また水稲生産が継続するので、次世代への稲作技術継承にもつながっていきます。

このプロジェクトには、農・畜の生産者さんや飼料メーカー、流通など、さまざまな業種の方々が集結しなければ実現できませんでした。

「一緒に協力し、大切な食卓を守ってほしい」。
準備を開始する際、コープデリが最初に声をかけたのが、「CO・OP特別栽培米 岩手ひとめぼれ」の生産地として協力関係にあった岩手県 農事組合法人「遊新」の高橋さん。
高橋さんの田んぼも、生産調整の対象になっていましたが「やっぱり米づくりが好き」だと、参加を表明してくださいました。
その後、コープデリとのつながりがある方々へ取り組みについてお話をさせていただき、米の生産者さんやJAだけでなく、飼料を作る人、豚を育てる人など、各分野のプロフェッショナルが集結し、2008年「飼料用米生産流通協議会」を結成。
異業種ともいえるメンバーで議論を重ね、「田んぼを守り、食料自給力を高め、おいしい豚肉を作る」という目標に向かって進み出しました。農業と畜産業が連携した瞬間でもありました。
スタート時には、それぞれの業界で使っている単位やルールの違いに戸惑いながら、何度も情報共有を行いました。
大きな課題となったのは、輸入飼料と国産飼料用米との価格差が大きく、最終的に豚肉の価格にも反映せざるをえないという点でした。
この課題に対して、高い品質の豚を安定して出荷するための「豚にストレスを与えない」豚の飼育技術、ミスがなく無駄のないと畜の方法、生産や流通の効率化、そして組合員さんにこの取り組みを正しく伝え、価格に納得して購入してもらうための広報など、プロジェクトの中で各々が受け持つ役割と成果を問う切瑳琢磨が行われ、メンバーの誰が欠けてもプロジェクトが成立しないような信頼関係ができていきました。

2009年4月に宅配で「産直お米育ち豚」の販売が開始されると、組合員さんから「とてもやわらかく、くさみもなくおいしかった」という声が届きました。
その言葉を聞いたときがプロジェクトの心願が成就した瞬間でもありました。

豚肉に次いで、この飼料用米で育てた鶏のたまごの販売も行い、飼料用米の拡大に取り組みました。「お米育ち豚プロジェクト」の他にもコープデリでは、米粉を使ったパンの商品化や、ごはんを主食におすすめする取り組みなど、お米の消費量を増やし食料自給力をあげる取り組みを続けています。

【飼料用米の生産】
飼料用米の生産が、経営として採算がとれることが重要です。この地域で、みんなが一年間通して農作業ができるようにして、将来に向けて農業が継続できる環境を作りたいです。
岩手県花巻市農事組合法人
「遊新」組合長 高橋新悦さん
【産直お米育ち豚の飼育】
農家さんの高齢化などで田んぼが少なくなり、何とか畜産業として協力できないかと模索していました。そこにこの話が打診され、すぐ請け負うことにしました。国内でエサも含めて豚を安定的に生産できるようにして、50年、100年継続できる事業を目指しています。
有限会社ありす畜産 代表取締役
水野 雄幸さん
【飼料用米の生産供給】
高橋さんのお米を飼料にして、水野さんに届けています。国産米使用による飼育から国産豚の生産・販売の取り組みは国内自給率向上への貢献となり、まさに「継続は力なり」を実感しています。今後も取り組みの礎を念頭に、関わっていきたいです。
JA全農 北日本くみあい飼料株式会社
対馬 匠さん
【産直お米育ち豚のと畜・カット】
このプロジェクトでは、私たちがミスしてしまうと消費者の皆さまにつながりませんので、私も、産直お米育ち豚の命を、おいしいお肉としてきちんと整えて活かし、次につなぐことを一番に考えています。
株式会社いわちく
八重樫 淳さん
【産直お米育ち豚の流通保管】
お米育ち豚の流通を通じて、産地の活気と消費地の安全・安心に貢献でき、とても光栄に思っております。産直お米育ち豚が組合員様にとっての心の里(ふるさと)として末永く愛し続けていただけるよう、より一層の発展を目指し取り組んでまいります。
JA全農ミートフーズ株式会社
小川 圭祐さん

お米で育てたら、
脂身が甘い豚肉ができました。

岩手県気仙群住田町にある豚舎にて。有限会社ありす畜産 代表取締役 水野雄幸さん

お米育ち豚を育てているのは、有限会社ありす畜産の水野さん。
「お米育ち豚」は、豚の肥育期間約180日のうち、出荷前の約2カ月間、輸入トウモロコシに換えて、国産の飼料用米(玄米)をすりつぶしたものを15%以上配合したエサを与えて育てています。この時期にお米を食べさせることで、肉質が締まり、甘みのある豚肉になります。
「組合員さんの口から“脂身までおいしい”“このお肉を知ると、もう他のお肉を食べられない”と聞いたときが、“本当にやってきて良かった”“お米で育てたことが良い結果につながった”と、喜びをかみしめられる瞬間です」と水野さん。

一方で、豚はストレスに敏感な動物で、ストレスが溜まると飼料がきちんと消化できず、肥育しなかったり豚肉の味に影響することもあります。
「この味と品質を維持するのは本当に大変なこと、という緊張感もあります。でも同時に、去年より今年の方がおいしい、来年はもっと絶対においしくするぞ、という気持ちがむくむくと湧いて来る。そこがおいしい豚を育てる原点となっています」と、水野さんは言います。

※写真はイメージです

豚肉はちょっと苦手という方にも「独特のくさみがない」と評判の「お米育ち豚」。国産のお米を食べて育った豚肉は、きめが細かく、かむとじわっと甘みがあります。

作っている方に会うと、
大切に食べたいなって気持ちが生まれます。

「お米育ち豚プロジェクト」では、自分たちが食べるものがどのように食卓に来ているのか、組合員さんに伝えることも大切な取り組みだと考えています。
コープデリでは、田植えや稲刈り、田んぼの生きもの調査や収穫体験など、おとなも子どもも楽しめる内容で、生産者さんとの交流を行っています。
この交流によって組合員さんの知識が深まることで、食品の選択肢のひとつとして「未来の日本の食卓」が加わることや、参加した子ども達が少しでも農畜産業に興味を抱き、食べ物の大切さに気づいたり、産業へ携わる夢をもつなど、食卓から日本を元気にするきっかけになることを願って取り組んでいます。

※2015年の産地交流の様子