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にしん漁の賑わいが戻ってきた石狩湾から。希少な北海道産数の子 パリッとした歯ごたえ、クセになっちゃう。にしん漁の賑わいが戻ってきた石狩湾から。希少な北海道産数の子 パリッとした歯ごたえ、クセになっちゃう。

お正月のおせち料理には、欠かすことができない数の子。毎日食卓に上る食材ではないかもしれませんが、それだけにこだわって選びたいという方も多いのではないでしょうか。「無漂白がいいな」「近海物だとうれしい」、そんな組合員さんの声にお応えすべく、海外産の数の子が大半をしめる中、コープデリでは希少な北海道産のにしんの卵を無漂白で加工した「北海道産味付数の子(昆布しょうゆ味)」をお届けしています。食べやすくカットして、昆布風味のしょうゆベース調味液で味付けした数の子は、お正月以外でも食べていただきたいこだわりの一品です。

食べた時の音でわかる?!
北海道産数の子。

「北海道産の数の子を選びたい」という人の多くは、「北海道産数の子ならではのパリパリとした食感がたまらない」といいます。「数の子は耳で食べる」といわれるほど、食感や歯ごたえが大切にされる食材。水揚げされる場所によって、数の子の食感に違いはあるのでしょうか。北海道小樽市にあるぎょれん総合食品株式会社(以下、ぎょれん総合食品)社長の中村隆一さんにお話を伺いました。
「日本の数の子製品の多くは、カナダ産やアラスカ近海で水揚げされたにしんの卵で、北海道産はまだまだ希少です。一般的に北米太平洋系の数の子でいうとにしん漁は、サンフランシスコから始まって、カナダ、アラスカ南東のサウスイースタン、ブリストル湾と移っていきますが、数の子の食感はだんだんやわらかく、もろくなっていく印象です。北欧など大西洋の数の子はもっとやわらかく、ソフト。そのなかで北海道沿岸、石狩湾周辺でとれた数の子は、小気味良いパリパリとした食感が特徴です」と中村さん。

ぎょれん総合食品株式会社 社長 中村隆一さん。現場主義で漁港にも足繁く通い、漁師さんとのコミュニケーションを大切にしています

食感の違いは、産卵場所の環境によるところが大きいといいます。
「北米太平洋や北海道近海のにしんは、海藻に卵を産みつけます。波に流されないように卵の粘度が強くなっていることが、パリパリとした食感につながっているのだと思います。一方、北欧などの大西洋のにしんは砂地に産卵するため、粘度を必要とせずに、水分を多く含んでいるために食感がやわらかくなると考えられています」。
北海道産数の子独特の弾力のある歯ごたえと、パリッパリッと耳に心地よく響く音は、豊かに海藻が生い茂る海の賜物。希少な北海道産数の子だからこそ、その食感を生かす丁寧な加工が求められます。

「無漂白」ならではのうまみと
食感を生かした加工。

「北海道産味付数の子(昆布しょうゆ味)」は、にしん漁が行われている厚田漁港からほど近い、北海道小樽市銭函にあるぎょれん総合食品で加工されています。
ここでのこだわりは無漂白で加工しているということ。「一般的に市販されている数の子は、過酸化水素で漂白して、鮮やかな黄色を出しています。もちろんその後は中和させて過酸化水素が残留しないようにしていますが、漂白された数の子は見た目は美しいのですが、数の子本来の持つ色ではなく、うまみや歯ごたえも変わってしまいます。無漂白の場合は全くそのようなことはせず、もとのナチュラルなままの状態です。ただ、血が回って黒くなっている部分も多く、3%の塩水で一晩血抜きをしてなるべくきれいにしています。それから5%、10%の塩水である程度“塩固め”にしてかたい数の子にします。最後は24%の飽塩水につけて塩数の子にしています。塩数の子の状態になるのに丸4日かかります」と中村さん。

数の子の腹出し〜塩数の子、味付けへ

1~3月にかけて水揚げされたにしんは、加工場に運ばれた後、急速凍結します。数の子の腹出し作業は、6月くらいから。専用の玉付き包丁を使い、素早く卵を取り出します。

左)お腹の中で完熟した状態の数の子
右)腹出し作業に使う専用の包丁。包丁の先端に玉が付いているのは、数の子を傷つけないため

腹から出した数の子は、塩漬けの工程へと進みます。腹出ししたものを丸1日3%の塩水につけて、翌日5%、夕方に10%、次の日24%にして、サイズ選別をしたのち容器を移し、再び24%の塩水に入れてマイナス14.5℃で保管。この微妙な温度設定は、卵を最適な状態に保つためにとても大切です。

塩分濃度の違う大型容器がずらりと並ぶ加工場

塩数の子の状態で保管されていたものを酵素で脱皮して、ひと晩かけて流水で塩抜きします。しっかり水切りした後に計量・袋詰めをして、昆布しょうゆベースの調味液を充填します。

昆布しょうゆ風味の調味液を充填。まろやかでコクのある味わいです

群来(くき)が戻ってきた
石狩湾のにしん漁。

にしん漁が盛んな厚田港にある石狩湾漁業協同組合

冬の日本海の海面が一面、乳白色に染まる群来(くき)と呼ばれる現象。にしんが産卵のために大群で押し寄せ、産卵・放精によって海の色が乳白色になる群来は、にしん漁で栄えていた明治から昭和初期にかけてはよく見られる光景でしたが、昭和30年代以降には幻となっていました。それが、ここ10年くらい石狩湾では再び群来の現象が確認されるようになってきました。

厚田の地で4代にわたって漁師を続ける石狩湾漁業協同組合(以下、石狩湾漁協)の副組合理事・上山稔彦さんにお話を伺いました。
「群来が見られなかった間もにしんが全く獲れなかったわけではありませんが、年に20トンから30トンくらいの水揚げしかありませんでした。最もにしんが獲れた1897年(明治30年)には北海道全体の漁獲量は97万トンにものぼったと聞いています。そんな中、自分の父親が漁協の組合長をやっていた頃に『ニシンだって人の手で受精卵を作って、人工孵化して放流すれば帰ってくるのではないか』ということで、組合と行政(当時の厚田村)と、石狩支庁と道が一丸となってにしんの稚魚をつくることを平成8年から始めたんです。稚魚を放流して1〜2年後、成長段階の小さいサイズのにしんが見られるようになり、3年後からは大型のにしんが徐々に増え、1シーズン100~200トン獲れるようになりました」と、上山さん。毎年続けてきた稚魚放流の努力が実り、石狩後志管内での水揚げは、まだその年によって変動があるものの、この数年で毎年約1,000から3,000トンにまで伸びています。

「一生現役で漁師を続けたい」と語る、石狩湾漁業協同組合 副組合理事 上山稔彦さん

さらに、上山さんたち漁業者の取り組みは続きます。
「小さなにしんを獲らないように、各自で網目の大きさに規制をかけていて、6cmより小さい網目の網を使ってはいけない、という決まりがあります。また、にしん漁の操業は、1月10日からですが、10日からすぐ操業しても未熟な数の子が何割入っているかによって操業日を遅らせたりもしています。完熟度が8割以下であれば操業日を繰り下げます」と上山さん。かつてのにしん漁のように獲れるだけとっていた時代とは違い、資源を守りながら未来へとつなげる漁業へとシフトチェンジしているのです。

極寒の1月から3月に行われるにしん漁。「夜中の午前1時半とか2時に出航します。一番冷え込むのは夜明け寸前ですね。漁をしている間はどんどん冷え込んでいきます。午前3時〜4時に網を上げるのですが、凍らないように表面にテントをかけたりと対策をとっています。卵が凍るとスポンジのようになって、数の子本来のパリパリとした食感がなくなり、価値がなくなってしまいます。加工する段階では急速冷凍するのでスポンジ状態にはなりませんが、船の上でじわじわと凍ってしまうとダメです。海水をかけたりテントを張ったりして凍らないように工夫しています」と、上山さん。にしんが獲れるようになったとはいえ、まだまだ希少な北海道産数の子。そこには、伝統のにしん漁を次の世代へつなげるため、さまざまな努力をしている漁師さんたちの想いが込められています。