株式会社岩手ファーム 田中 光行さん
「人」を、「食」を、想う
気持ちが
ひとつになった
「CO・OP産直稲穂の
みのりたまご」
コープデリはこれまで、田んぼを守り、日本の食料自給力の向上につながればと飼料用米の活用に取り組んできました。その取り組みから生まれた商品のひとつである「CO・OP産直稲穂のみのりたまご」。たまごの生産や稲作に関わるさまざまな人の想いが結実しています。
このたまごには、
“想い”が詰まっています
「CO・OP産直稲穂のみのりたまご」を生産する産地のひとつ、岩手県盛岡市の株式会社岩手ファーム(以下、岩手ファーム)では、平成20年から鶏のエサへの飼料用米配合を始めました。その背景には、コープデリと岩手ファームの会長・中村光夫さんの“ある想い”がありました。
7歳のときに第二次世界大戦の終結を迎えた中村さん。まだ幼い頃に戦後の食糧難を経験し、食べるもののないつらさ、厳しさを身にしみて知ったと話します。そんな中村さんは「二度と食べるものがない思いをしたくない。これからの子どもたちにも、そんな思いはさせたくない。だから食料自給力を上げなければ」という想いを持ち続けてきました。戦後、日本の食生活が豊かになる一方、お米が余る状況に転じ、周りでは生産調整によって稲作を休む田んぼや転作した畑が増えました。中には農業を辞めていく人も少なくありませんでした。
そして出会ったのが飼料用米でした。
中村さんは飼料用米の第一人者、東京農業大学の信岡誠治教授(当時)の「飼料用米が日本の畜産を変える」に賛同し、飼料用米の研究を始めます。同じ頃、コープデリからも飼料用米の取り組みについて話を聞き、飼料用米で育った鶏のたまごの商品化へと動き出します。
「休耕田をなくしたい。お米をつくりたい農家がお米をつくれる環境にしなければ」。中村さんはそんな想いに駆られ、鶏のエサにお米を配合することに挑戦。実験用飼料用米の栽培は、旧知の仲だった稲作農家の伊藤与作さんに依頼しました。
「鶏が食べるお米をつくってほしい」。そう聞いたとき、「米をつくれるなら」と一切の迷いなく引き受けたと話す伊藤さん。「本当に、ありがてぇど思った。転作して他のものを作るより、やっぱり米がいい」と話します。こうして、伊藤さんから始まった飼料用米栽培は周囲にも広がりを見せ、今では伊藤さんの田んぼがある玉山地区で80軒の生産者が飼料用米を栽培しています。
「もっとたくさんの農家が飼料用米をつくりたいと思っています。その想いを叶えるためにも、『CO・OP産直稲穂のみのりたまご』をより多くの人に知ってもらい、食べてもらえるよう、取り組んでいかなくては」と中村さん。
さらに、岩手ファームでは、鶏糞を肥料に加工して近隣の農家に提供しています。「鶏卵の生産は、地域の人たちとの良好な関係がなければ持続できません。農業は地域の中で良い循環を生み出さなければ」。中村さんは未来を見据えてそう話します。
コープデリグループは商品の利用を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。
「お米育ち豚プロジェクト(飼料用米の活用)」はこちらから
たまごには、
きれいな空気と水が必要でした
「CO・OP産直稲穂のみのりたまご」が生まれる場所は岩手山の麓、標高約300mの高原にあります。農場周辺には豊かな自然が広がり、夏でも涼しい風が吹く場所です。「夏の温度管理には特に気を遣っています」と話すのは、岩手ファームの社長・中村徹さん。
実は、鶏舎の温度管理はとても大切なこと。鶏には汗腺がなく、汗をかくことができません。気温があまりにも上昇すると水ばかり飲んで、水っぽいたまごになってしまいます。また、暑さで鶏の食欲が減退すると、産むたまごも小さくなってしまうため、夏でも涼しさを保つことが欠かせません。
「気温のほかにも、大切なことがあります。それは、水です」と中村さんが教えてくれました。
たまごの約75%は水分。親鶏が飲んでいる水のおいしさは、たまごの味を決める上でもとても大切です。岩手ファームでは、岩手山から湧き出る「生出谷地(おいでやち)の湧水」と同じ水脈の地下水を使用しています。
鶏にストレスをかけない環境づくり
さらに、岩手ファームでは、鶏舎のスペースを広くとったり、自然の風を入れたり、鶏にストレスをかけない環境を整えています。
素性のはっきりした親鶏のたまごを使用するため、鶏をひなから飼育。生まれてから約60日目までのひなは「育雛(いくすう)舎」で育てます。ここは、生まれたての繊細なひなが暮らす場所。ひなが入る前に、鶏舎全体を水で十分に洗った後、消毒、乾燥を行い、衛生管理を徹底しています。
少し大きくなった産卵前の鶏は130日目までを目安に「育成舎」に、その後産卵用の「成鶏舎」へ。ここで約600日間にわたって、鶏はたまごを産みます。成鶏舎は一般的な鶏舎よりも広いスペースを確保し、新鮮な空気を取り入れやすい造りに。鶏たちができる限りストレスなく、安定した品質のたまごを産めるように配慮しています。
「毎日見ていますから、やっぱり可愛いですよね」。中村さんは、愛情たっぷりに鶏を見て微笑みました。
だから、鮮度にこだわります
殻の色や黄味の色の濃さなど、たまごの見た目には色々ありますが、「どれがおいしいか?」を一様に決めることはできません。殻の色は鶏の種類によるものですし、たまごの黄味の色は、エサによっても変化します。
だからこそコープデリは、人がたまごにできることとして、たまごの採取システムや低温輸送によって鮮度を保つよう品質管理を徹底しています。
たまごの鮮度は卵白を見ると分かります。
卵白は、黄身をしっかりと支える濃厚卵白とその周りを囲む水様卵白から成り、鮮度の良いたまごには、濃厚卵白がたっぷりと含まれています。割ると濃厚卵白がこんもりと盛り上がるのも特長です。
また、生まれたてのたまごは炭酸ガスを多く含んでいるため、卵白が白くにごっているものもあります。濃厚卵白は時間が経つと、さらりとした水様卵白に変化するため、古いたまごほど水っぽさが目立ちます。
岩手ファームでは、できるだけ新鮮なたまごを組合員さんの食卓へお届けしようと、採卵から出荷まで、さまざまな工程に気を配っています。
岩手山麓から食卓まで、
大切に、大切にお届け
「鶏舎で産まれたたまごは、その日のうちに採取・パッキングするよう工場でシステム化しています」と話すのは、遠藤浩さん。
鶏舎から工場で受け入れたたまごは、何重もの検査や洗浄を経て、パック詰めされます。品質を守るため、検査や洗浄・乾燥は念入りです。汚れのひどいたまごはないか、ひび割れしていないか、血卵がないか、など機械の技術と人の目で何重にもチェックしています。
「たまごは呼吸し続けています。殻を割る瞬間まで生きているんです。だから、たまごを洗浄する水の管理も大切。管理レベルはどこにも負けません」と胸を張る遠藤さん。
パック詰めされたたまごは、組合員さんの元へ届くまで低温輸送されます。
「少しでも新鮮なたまごを届けたい」。そんな想いが「CO・OP産直稲穂のみのりたまご」をいっそうおいしくしているのかもしれません。