ヒトとコトと

商品に携わる人と想い、伝えます。

徹底した管理ときめ細かな飼育。あきらめない、その強い想いが「えばらハーブ豚」を作り上げました。徹底した管理ときめ細かな飼育。あきらめない、その強い想いが「えばらハーブ豚」を作り上げました。

「おいしくて、なるべく薬に頼らず育てたお肉を食卓に」と願う組合員さんの声に応えて、コープデリでは2018年から「えばらハーブ豚(とん)」の取り扱いを始めました。この豚は、生まれてから出荷まで、抗生物質や合成抗菌剤、駆虫剤を飼料に使わずに、育てています。今回は、全国的にも珍しい「薬に頼らない豚の飼育」の生産に挑んだひとりの養豚家の取り組み、そして「オンリーワン」を目指して誕生した「えばらハーブ豚」のおいしさの秘密をご紹介します。

この豚肉を本当に
必要としてくれる人に届けたいんです。

「えばらハーブ豚」を生産しているのは、群馬県高崎市にある有限会社江原養豚(以下、江原養豚)の江原正治さんです。江原さんの農場があるのは、遠くに赤城山を見渡せる高崎市東部の田園地帯。冬には「赤城おろし」と呼ばれる北風が吹くこの場所で、先代である父、故・平治さんの時代から養豚業を営んできました。この農場で育てられている「えばらハーブ豚」は、家畜に与える配合飼料に抗生物質・合成抗菌剤・駆虫剤を一切使用していない無薬飼料飼育の豚です。一般的に豚を育てるには、病気を防ぎ、成長を促すための抗生物質をエサや注射で投与しますが、江原さんは2000年から、当時国内ではまだ誰も挑戦したことがなかった無薬飼料飼育で豚を育てることに挑んできました。

※感染症予防のため、ワクチンを接種しています

養豚場を二人三脚で切り盛りしていた当時の江原さんご夫妻

あるとき江原養豚の徹底した衛生管理や病気になる豚の少なさを評価した飼料会社の獣医師から「抗生物質なしのハーブ飼料で豚を育ててみないか」と打診されました。「最初は無理だと思いましたが、試しに100頭だけ無薬飼料飼育をしてみたんです。その100頭は、ほぼ問題なく健康な豚に育ったので、2001年2月から本格的に無薬飼料飼育をスタートさせました」。しかし、全頭を無薬飼料飼育に切り替えた直後から少しずつ豚の様子に異変が起き始めたのです。「本来は丸々と育つはずの豚の背中がヤギのように尖って、見るからに不健康そうでした。原因は全くわからず、出荷したところで売り物にならない。経営は赤字続きになりました」。「これ以上は、もう続けられない」とあきらめかけたときに江原さんの背中を押してくれたのは、ずっと二人三脚でやってきた今は亡き妻の美津子さんでした。「安全でおいしい豚肉を届けたい」と努力する江原さんを支え、営業面を一手に担っていた美津子さんの「本当にやめてしまっていいの?」という言葉に奮い立った江原さんは、自分の迷いを払拭すべく、ある講演会に参加しました。これが大きな転機になったと江原さんは振り返ります。

群馬県高崎市にある有限会社江原養豚社屋

受講したのは、医療現場における耐性菌問題をテーマにした講演会でした。受講後、講師の方たちと話をする機会を得た江原さん。豚の無薬飼料飼育に挑戦していること、経営が苦しく断念しかけていることなどを話すと、「あなたのやっていることはすごいことです。絶対にやめないでください」と激励され、「この豚を求めている人は必ずいる。本当に必要としている人に届けられるようにやり続けよう」と決意を新たに無薬飼料飼育を続けました。無薬飼料飼育を始めて4年目の2003年ころから、豚の状態が安定してきたそうです。

無薬飼料飼育に挑戦し始めた当時を振り返る江原さん

きめ細かな飼育管理と、
ハーブ飼料で育てています。

「えばらハーブ豚」は、出生から出荷まですべてのステージにおいて抗生物質や合成抗菌剤、駆虫剤を飼料に使わずに育てた豚肉です。種豚に特定病原菌不在のSPF豚を用い、発育の段階ごとに血液、糞便、遺伝子などの検査を行って健康状態を管理しています。「抗菌性物質をまったく使わないという考え方は、ヨーロッパでは主流となりつつありますが、飼養密度の高い日本では、高い飼養技術が必要なため成功例は少ないのが現状です」と江原さん。獣医師からアドバイスを受けながら飼育環境の改善に取り組むなど、徹底した管理ときめ細かな飼育を心がけてきました。豚を移動・出荷する際には、豚舎をまるごと空にして、徹底的に洗浄・消毒・乾燥させるオールイン・オールアウト方式を実施。洗浄には消毒・殺菌力が高い逆性せっけんを使っています。
また、飼料には遺伝子組み換えでない大豆やトウモロコシを主原料に、オレガノやミントなど11種類のハーブや乳酸菌を配合した独自のものを与えています。「飼料にハーブを配合することで、臭みがなく、脂身があっさりとしてうまみのある豚肉になっています。また、ビタミンB₁、ビタミンEが一般豚の約2倍という検査結果も出ています」と江原さん。2006年には、食品の生産情報(誰が、どこで、どのように生産したか)を消費者に提供する「生産情報公表豚肉JAS」の認定も取得。種豚、給与飼料、トレーサビリティーを明確にすることで、江原さんは「本当にこの豚肉を必要とする人たちに届くこと」を願っています。

11種類のハーブや乳酸菌を配合した独自の飼料

豚の健康を維持するため、豚肉本来のおいしさを作り出すために、抗菌性物質不使用のハーブ飼料を与えています。

豚の健康を維持するため、豚肉本来のおいしさを作り出すために、抗菌性物質不使用のハーブ飼料を与えています。

次世代を担う子どもたちに
食べてもらいたい豚肉です。

これからも「食卓が笑顔になるおいしさ」をお届けしていきます。左からスタッフの三浦典子さん、江原さん、江原仁美さん。

国内で初めて薬を使わない豚の生産に挑戦しはじめたのが2000年。先代が昭和26年に始めた養豚を継ぎ、妻の美津子さんと共にがんばってきました。ところが2015年に美津子さんが他界。その後は、長男の妻である仁美さんが美津子さんの役割を引き継いで、販売や営業部門を担っています。また養豚の仕事に就きたいと自ら志願してきた三浦典子さんも加わりました。「未来を担う子どもたちに安心して食べてもらいたい。健康を求める組合員さんが幸福感を感じられる豚肉をお届けしたい」という熱い想いのもと、「えばらハーブ豚」の生産に情熱を傾けています。
コープデリではこれからも江原養豚のような「環境と人に寄り添った食づくり」に真摯に取り組む生産者を応援し、組合員さんのもとに「食卓が笑顔になるおいしさ」をお届けしていきます。