国産野菜100%、
まろやかな味わい
九州で誕生し、全国に広がった「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」は、しょうゆ風味で具材感たっぷりのドレッシング。「これで子どもが野菜を食べてくれた」、という組合員さんからの声も多く、サラダ以外のお料理にもいろいろ使える魔法のドレッシングです。
2018年、使い勝手のよさを追求して、
ボトルを大幅リニューアル!
「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」を製造しているのは、九州の老舗しょうゆメーカーであるフンドーキン醤油株式会社(以下、フンドーキン醤油)です。
「実は全国発売から20年以上、一度も大幅には容器を変えていなかったんです。逆に言うと当時としては『よくできていた』とも言えるんですが、その間に組合員さんからさまざまな要望が寄せられていたことも事実です」と、取材当時ドレッシング工場長だった池辺剛さん。2015年春に新容器プロジェクト会議を立ち上げ、組合員さんの声をもとに問題点の洗い出しをしました。
旧ボトルに寄せられていたのは「とんがりキャップが開けづらい」、「液だれする」、「持ちにくい」、「油と調味液が混ざりにくい」、「紙のラベルがはがしにくい」など、さまざまな声。これらの問題点を解決すべく、プロジェクトが始動しました。
「このドレッシングは、具材感があるのが特徴ですから、適量を絞り出す感覚がほしい。しかし、容器に強度を求めると硬くなって出しづらくなるし、軽量化するとやわらかくなりすぎてドレッシングがドッと出てしまう。手にフィットする持ちやすい形でありながらちょうどいい強度にするのに苦労しました。また、とんがりノズルに関しても液切れの良さを追求する中で、そり返しの角度など微妙な調整を繰り返しました」と、開発の苦労を振り返ります。
細部にまでこだわった容器が完成したのは、プロジェクトを本格化させてから3年後のことでした。中栓がなくなり2ステップで開けやすくなったキャップ、中央にくびれと溝をつけて持ちやすく、そして振りやすくなったボトルの形状、そり返しをつけて液だれしにくくなったノズル。「でも、これが100%じゃない。新しいものを追いかけながら常に使いやすいものを、という想いで開発を続けています。新ボトルのドレッシングも組合員さんにたくさん使っていただいて、まだまだ声を寄せてもらいたい」と池辺さん。“さらに使い勝手のよさを追求し、さらに愛されるドレッシングへ”という熱い想いが伝わってきます。
たまねぎもにんにくも、
そしてしょうゆも「生」なんです
1999年、本社からほど近い山間に「環境と人にやさしい」をテーマにつくられたドレッシング工場。排水処理には微生物を含んだ有機汚泥によって汚水を浄化する「活性汚泥方式」を採用しています。また、自然豊かな環境を最大限に生かすために、敷地内はアスファルト舗装をせずに石畳にし、地中に染み込んだ雨水は、地下水となり、敷地内にある受水槽にくみ上げられ、工場内で利用されています。
この工場でつくられている「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」の特徴のひとつは、たまねぎ・にんにく・乾しいたけ・しょうがと、その名の通り野菜がたっぷり入っていること。
味の決め手は何といっても“生”ですりおろしたたまねぎとにんにく。加熱殺菌をせずに高酸度酢に漬け込み殺菌することで“生”のまま使用することができ、素材そのものの風味やうまみ、食感を残しています。たまねぎは、北海道産と九州産のものを季節によって使い分け、産地の切り替え時期には使用予定のたまねぎを取り寄せて、味に差がないかを確認する徹底ぶり。味が大きく変わってしまわないように、少しずつブレンドしながら切り替えを行い、ドレッシングの味が安定するように微妙な調整を行っています。
そのたまねぎの下処理は、すべて手作業で行われています。それは、たまねぎひとつひとつに腐れや傷みがないかを目視でチェックするため。ベテランから新人までパート従業員が、片手にたまねぎ、もう一方の手に皮を風圧で飛ばすためのエアガンと、ナイフの2つを持ち、かなりのスピードでヘタを切り落とし、たまねぎの皮をむいていく様子は、まさに職人技。
たまねぎをカットして12年目というパート従業員(取材当時)の吉良美智子さんは、「1分間に平均15個から20個、ベテランになると、それ以上の数を処理していきます。最初の頃は、たまねぎをカットしていると、涙が止まらなくなったりしてたいへんでしたが、今はもうすっかり慣れて、目も痛くならないし、涙もでなくなりました」と話します。
生のまま使用される、たまねぎとにんにくは、細かくミキサーできざみ、高酸度酢に一晩漬け込みます。さらに加熱殺菌したしょうが、乾しいたけ、その他の原材料を加えてかきまぜます。
味のベースとなるしょうゆは、もろみを絞っただけの、加熱処理をしていない「生(なま)しょうゆ」。加熱する代わりに微生物を通さないフィルターでろ過処理をしているので、しょうゆ本来の豊かな香りやうまみがそのまま感じられます。これは、醤油製造会社ならではのこだわりです。
組合員さんに育ててもらったドレッシング
1980年代中頃、フンドーキン醤油では、「醤油製造会社ならではの、他ではできないドレッシングを作りたい」と、当時ではめずらしいしょうゆベースのドレッシングを試作。組合員さんがイベントでそのドレッシングを試食したところ、「とてもおいしいドレッシングだから、取り扱ってほしい」という声で生協での取り扱いが始まりました。
このフンドーキン醤油のドレッシングが「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」の前身となりました。当時は大分県民生協のみで供給されましたが、組合員さんの間で当時ほかになかった“しょうゆ味”が話題に。その声に後押しされ、もっと多くの方に味わっていただきたいと「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」は九州地区限定のコープ商品として開発が始まりました。
今でこそしょうゆベースのドレッシングは一般的ですが、登場当時の1980年代頃には、しょうゆを使ったドレッシングは珍しく、日本生活協同組合連合会九州支所、地元組合員さん、フンドーキン醤油が協力しあって、生しょうゆや、すりおろした生の野菜を材料に、毎日食べても飽きのこない、野菜をたっぷり食べてもらえる味をめざしました。また、品質安定剤など不要な添加物はいっさい使用しないドレッシングとして完成。九州地区の多くの組合員さんに支持されました。
その矢先、時代が求めるヘルシー志向に応えようと、ドレッシングの油分を下げたことで、生揚げ(きあげ)しょうゆに閉じ込められた酵母菌や乳酸菌が容器のなかで活動をはじめ、キャップをとるとドレッシングが一気に噴き出すという事象が起きてしまいました。この出来事によって、10カ月の出荷停止処分を受けたフンドーキン醤油。そのときのことを振り返って、加藤さんはこう話します。
「あの時は大変でしたが、みんなが一丸となって問題解決に取り組みました。結果、生揚げしょうゆを数ミクロンの細かいフィルターでろ過して、菌を取り除くことで問題をクリアしました。ただ、当時はどういう微生物が影響しているのかを特定するのに、とても苦労しました」。
一方で、この出来事は、何百人という組合員さんから再発売を望む声が寄せられたことで、当時の和風タイプのドレッシングが、いかに支持されているのかを知るきっかけにもなりました。その組合員さんたちの期待に応えるべく、品質に対する取り組みは、一層厳しいものに。
「弊社ではいち早く、遺伝子レベルで微生物を特定する検査方法を取り入れたんです。今では、どういった微生物が影響するのかがすべてわかっているので、原因になる原材料を使わないようにしたり、微生物が活動しやすい環境を作らないようにしています。また、微生物には、お酢がかなり有効だということもわかっているので、多くの工程でお酢を使っています。お酢をうまく使うことで、生のたまねぎやにんにく、生しょうゆを使用することができているんです」と加藤さん。
発売から20年以上、現在まで愛されるロングセラーに育った「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」。「このドレッシングを使うと子どもが野菜を食べてくれる」「何にでもつかえる」「生野菜がおいしく食べられる」といった組合員さんの声が多く寄せられ、今では「このドレッシングを買いたいから生協をはじめた」と声が届くほどの、コープを代表する人気商品となりました。
味わいをリニューアル。
「一番のポイントは、大きく変えないことでした」
「さらにこだわった商品にしよう」、「時代に合わせて、味わいも見直してみよう」と、2017年には、発売以来初めて原料や味わいの見直しをしました。
「長い間、組合員さんに愛され続けてきたドレッシングだけに、リニューアルによって『味が変わってしまった』と思われることが、大きなプレッシャーになっていました。味わいそのものは大きく変えずに、いかによりよいものにするか、ということに留意して、リニューアルに取り組みました」と、池辺さんは語ります。
リニューアルした点は、ドレッシングの具材として使用している野菜を国産野菜だけにしたこと。かねてより「具材は、すべて国産のものを使用してほしい」という組合員さんの声があったことから、海外産の野菜をはずし国産野菜のみを使うことにしました。「野菜たっぷり」のネーミング通り、たまねぎ、にんにく、乾しいたけ、しょうがを、具材としてたっぷり使っています。
もう一点変更されたのが「酸味」の部分です。
「ここ数年は、酸味がまろやかなものが好まれる傾向にありました。そこで、このリニューアルのタイミングで、酸味の部分を少し見直してみようか、ということになりました」と、池辺さん。そこで、オリーブオイルやりんご酢など、さまざまな原料を使い、試作した結果、「味のバランス的に配合を大きく変えなくてもいい」という理由で、お酢の一部に米酢を使うことになりました。米酢は、米を原材料とした醸造酢で、コクのあるうまみ、まろやかな味わいとやわらかな香りが特徴。「今まで通り、『野菜たっぷり』のおいしさはそのまま、少しだけまろやかな味わいになったと思います」と、池辺さん。
ベーシックな味わいを守りつつ、ちょっとだけ酸味がまろやかになった新生「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」ができあがりました。
野菜たっぷりのおいしさはそのまま、ちょっとだけマイルドな味わいに、そして使われている具材の野菜原材料が国産100%になった「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング」。リニューアルと言っても、味わいに大きな変更は行いませんでした。「うちの子は、小さい頃からこのドレッシングでしか、サラダを食べないんです」、「他のドレッシングを使っても、やっぱり最後は、この和風ドレッシングに戻ります」と話す、開発メンバー。
「長年、愛用していただいている組合員さんに『味が変わってしまった』と言われない範囲で、でも時代に合わせた味わいにする」というミッションは、このドレッシングを作り続けてきたメンバー、それぞれの想いでもありました。
- 1980年代半ば
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組合員さんの要望を受け、フンドーキン醤油のブランドとしてスタート。
大分県民生協(現:コープおおいた)のみで供給を開始。
- 1988年
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大分県民生協(現:コープおおいた)で人気を得たことで、九州地区限定で「CO・OP和風ドレッシング」としてコープ商品化。ここでも、従来なかったドレッシングとして、またたく間に組合員さんの人気を獲得。また、「油分ばかり先に出てしまう」などの声を受け、容器のキャップ口をとんがりタイプに変更。
- 1990年
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健康に配慮して油分を下げたことで、生揚げしょうゆの発酵菌が増え過ぎるという事象が発生。これを機に生揚げしょうゆを特殊な膜でろ過する技術を採用。味や香りはそのまま発酵菌だけを取り除くことに成功。
- 1994年
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全国コープ商品として常温タイプの「CO・OP野菜たっぷり和風ドレッシング300ml」登場。
- 1995年
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「すぐになくなるので、もう少し大きいものを」という要望から「お徳用500ml」タイプが登場。
- 2005年
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「健康を考えて油分を減らしてほしい」という声を受け、油分控えめのカロリーハーフタイプが登場。
- 2017年
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初めてのリニューアル。国産野菜100%使用、お酢の一部に米酢を使用して、酸味がまろやかになりました。
- 2018年
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全国発売から24年を経て、ボトルを大幅リニューアル。デザインを一新して、さらに使いやすくなりました。