毎日食べるものだからこそオーガニックがいいと思う

有機JAS認証の国産鶏卵を産直化。
「CO・OP 産直黒富士農場
オーガニックたまご」

「毎日の食卓に欠かせないたまごは、できるだけオーガニックなものを選びたい」という組合員さんの声にお応えして、日本で初めて有機JAS認証を取得した国産鶏卵をコープデリブランドとして産直化。「共存共栄の精神のもと、オーガニックに取り組むことは生き方そのもの」という「農業生産法人 黒富士農場」(以下、黒富士農場)の生産者にお話を伺いました。

大自然の中で「平飼い自然放牧」で
鶏を育てています

山梨県甲斐市、標高約1100mの山懐にある黒富士農場。豊かな自然が広がる山の斜面に、18棟の鶏舎が点在しています。「ここから富士山が見えなかったからこそ、この自然環境が残ったんです」と話すのは、黒富士農場の向山洋平さんと向山一輝さんご兄弟。山梨百名山の3000m級の山々に囲まれ、農場がある場所からは富士山が見えないため、観光開発されることなく、手付かずの自然が残りました。

手付かずの自然が残った標高約1100mの山懐にある「農業生産法人 黒富士農場」

手付かずの自然が残った標高約1100mの山懐にある「農業生産法人 黒富士農場」

黒富士農場は1984年に、ご兄弟の父である向山茂徳さんが設立。当時は、鶏舎内にすき間なくケージを積み上げる大量生産型の「ケージ飼い」をしていましたが、1989年に農場内の斜面を囲って、昔ながらの「平飼い」を試すことにしました。平飼いにすると、明らかに鶏の様子が変わり、とても穏やかになったと感じた茂徳さんは、1991年より本格的に「平飼い自然放牧」を開始します。

黒富士農場の向山洋平さん(左)と向山一輝さん

黒富士農場の向山洋平さん(左)と向山一輝さん

放牧飼育で、のびのびと育っている鶏たちはとても人懐こくて、人の姿を見ると興味深そうに寄ってきます。毎朝、スタッフが放牧場の扉を開けると、鶏たちはいっせいに外へ。草を食んだり、日陰で休んだり、くぼみに入って砂浴びをしたり、自由に過ごす鶏たち。給餌器が回り始めると、餌を食べるためにいったん鶏舎に戻り、お腹がいっぱいになると再び外を駆け回り、夕方には鶏舎の中へ戻るというのんびりとした暮らしをしています。そこには、「鶏はモノではなく、生き物。心だってある。本当においしいたまごは心身ともに健康な鶏から産まれます。だからこそ穏やかに育てて、おいしいたまごを産んでくれる環境を整えるのがわたしたちの仕事です」という向山さん親子の想いがあります。

1991年より開始した「平飼い自然放牧」でのびのびと育っている鶏たち

1991年より開始した「平飼い自然放牧」でのびのびと育っている鶏たち

鶏に与える水も飼料も
人が安心して口にできるものを

自然豊かな黒富士農場の敷地内には清らかな湧水が流れています。「この場所に農場を作った大きな理由のひとつは、この湧水です」と教えてくれたのは、一輝さん。

農場内を流れる天然湧水。この水をろ過して飲み水として鶏に与えています

農場内を流れる天然湧水。この水をろ過して飲み水として鶏に与えています

たまごにとって水はとても大切で、卵白の約89%は水分といわれています。「水道はこの近くまで来ているけれど、あえて水道水は使っていません」と、自分たちの飲み水も、鶏たちに与える水もすべてこの湧水を使用しています。
また、たまごの質は飼料でも大きく変わります。黒富士農場では、「分別生産流通管理済みの飼料」「発酵飼料」「有機栽培飼料」を採用。飼料の主原料は、有機栽培のトウモロコシと大豆です。大豆はラオスから輸入したフェアトレードのもの、トウモロコシはアメリカの農場との飼料提携で仕入れています。できる限り現地視察を行い、年に一度は有機JAS審査員を伴い、畑や作物の調査に訪れています。これらの飼料は、現地から日本に運び、国内の有機認定工場にて有機配合飼料として食べやすく粉砕。それを飼料として鶏たちに与えています。

こだわりの飼料について熱心に説明する向山洋平さん

こだわりの飼料について熱心に説明する向山洋平さん

さらに、そこに加えているのはオリジナルの「発酵飼料」。おからと米ぬかを主原料に、海藻粉末、アオサ、魚粉、かき殻、小豆煮皮飼料、ニンニク、クロレラなど約10種類の素材をブレンドし、約1週間かけて発酵させた飼料です。飼料を発酵させている施設内はまるで漬物工場のようないい匂い。「これらは、すべて人が口にしても安全なものばかり。食べても大丈夫ですよ」と洋平さん。この飼料を与えることによって、鶏の腸内環境が整い、健康な鶏が育ちます。ここにも黒富士農場の「おいしいたまごは健康で元気な鶏から」という信念が生かされています。

自然環境農法を取り入れ、
鶏卵では日本で初めて
有機JAS認証を取得

黒富士農場に行って驚くのは、養鶏場独特のにおいがほとんどしないこと。これは、自然循環法であるBMW技術を取り入れているからです。BMW技術とは、B=バクテリア M=ミネラル W=ウォーターの略で、岩石と腐葉土と水の力による自然浄化を基礎とする農法。特別な菌を用いるのではなく、土着の微生物の力を活性化させて、鶏糞などを活性堆肥に、汚水を、ミネラル分を多く含んだ生物活性水に転換して利用します。黒富士農場ではこのBMW技術で作ったBM活性堆肥を鶏舎内の床下に敷き込み、土代わりに活用。鶏舎内や鶏の飼育環境改善に役立てています。「BM活性堆肥が鶏糞を分解するため、鶏舎の床下が常に乾燥してさらさらした清潔な状態なので、ハエなどの害虫が発生しにくく、畜産独特のにおいも抑えられています」と一輝さん。

BMW技術で作ったBM活性堆肥を鶏舎内の床下に敷き込み、土代わりに活用しています

BMW技術で作ったBM活性堆肥を鶏舎内の床下に敷き込み、土代わりに活用しています

1987年からBMW技術を導入し、鶏の飼育環境改善に取り組んできた黒富士農場では、2007年に有機JAS認証を取得しました。取得に向けて動き出した2000年頃にはまだ、採卵鶏での有機JAS認証の仕組みさえできていなかったため、農林水産省と連携してその仕組みを作るところから取り組みました。

鶏が心地よく過ごせるように常に飼育環境改善に取り組んでいます

鶏が心地よく過ごせるように常に飼育環境改善に取り組んでいます

有機JASマークは、「その製品が『有機』の基準を満たしている」と国が認めたことを示すもの。鶏の食べるもの、飲むもの、暮らす場所、全てにおいて厳しい基準が設けられています。たとえば飼料は、分別生産流通管理済みであることはもちろん、無農薬で育てられたものだけが有機飼料として認められます。また、有機JASの認証機関に現地へ同行してもらい3年間無農薬・無化学肥料で栽培されたという証明がないと有機認証はされません。毎年厳しい審査が行われ、合格したものだけに許される有機JASマーク。「CO・OP 産直黒富士農場オーガニックたまご」には、しっかりとこのマークが表示されています。

徹底した衛生管理・品質管理で
出荷しています

有機JAS認証にもとづき管理生産された鶏卵を、安心して組合員さんのもとにお届けできるように、衛生管理にも力を入れています。衛生管理を担う「GPセンター」へ搬入されたたまごは、すべて洗卵され、「キズがないか」、「汚れがないか」、「異物がないか」を厳しくチェック。まずは人の目で、表面の汚れや割れ、規格外のたまごを判別し、取り除いていきます。

ひとつひとつのたまごを目視で検品しています

ひとつひとつのたまごを目視で検品しています

その後、検査機器によって、目に見えないレベルのキズや、たまごの中に血液などの異物が混じっていないか、白身が水っぽくなっていないかなどを細かくチェックします。人間の目と機械の目、両方を合わせて最大限の安全性を追求した上で、パックに詰めて出荷されています。

黒富士農場オーガニックたまご

次世代の生産者たちに誇れるような
魅力溢れる農業を目指して

農家の高齢化や後継者不足が問題になり、世代交代がうまくいかない生産者が多い中、黒富士農場ではしっかりとその思想や経営が次の世代に受け継がれ、若手生産者の仲間が増えるなど、広がりを見せています。
「今後私たちが目指すのは農業の分野から日本を明るくすること。そして次世代の生産者たちに誇れるような魅力溢れる農業を行っていくことです」と洋平さん。

左から若手生産者の村松潤一さん、向山一輝さん、向山洋平さん

左から若手生産者の村松潤一さん、向山一輝さん、向山洋平さん

コープデリでは、さらに産地とのパートナーシップを深め、「持続可能な食糧生産の取り組み」を応援するため、「CO・OP 産直黒富士農場オーガニックたまご」を産直化しました。コープデリは、次世代の生産者、そして未来の農業を応援しています。
※産直とは
コープデリの「産直」とは、生産者・生協・組合員がつながり、安全性が確保され、おいしさと環境配慮を兼ね備えた、生い立ちがはっきりわかる農畜水産物をお届けする取り組みです。

公開2024年8月