甘辛味のタレがよくしみた、
やわらかチキンカツ
アレンジして良し、お弁当に良し、どんなときも家族に笑顔をもらえる「甘辛チキン南蛮カツ」。2007年の発売以来、多くの組合員さんに愛され、コープデリ宅配の冷凍食品フライ部門でも1位になる実力を持つ人気商品です。
開発当初、一番こだわったのは
オリジナルブレンドの甘辛タレ
やわらかく仕上げた国産若鶏ムネ肉のカツに、しょうゆベースの甘辛タレをしみ込ませた「甘辛チキン南蛮カツ」。小さなお子さんからご年配の方まで幅広い層に支持されているこの商品の開発を担当したのが株式会社食研(以下、食研)の妻沼聡さんです。この開発を任された2006年当時、妻沼さんは商品開発を担当して2年目、まだ二十代の若者でした。
「タレの開発を担当するのは初めてで、勉強をしながら同時進行で作り上げていった感じです。まだ若かったこともあって、リスクなどを考えずにがむしゃらに取り組みました」と妻沼さん。実は「甘辛チキン南蛮カツ」には「南蛮風のチキンカツを作ろう」というところから開発がスタートした別の商品があったのですが、当時の担当者が宮崎県のご当地メニュー「チキン南蛮」を知らずに、味付けの参考として「あじの南蛮漬け」のタレを徹底的にリサーチして作ったものでした。
「チキン南蛮風」ではありませんでしたが、鶏ムネ肉でもパサつかずにおいしく仕上がった自信作でした。ところが発売前に商品化の話は立ち消えになってしまったのです。食研ではせっかくの商品をお蔵入りにするのはもったいない、と生協向けに再提案することを検討。そこで、白羽の矢が立ったのが妻沼さんでした。
「せっかく生協様向けに提案するのであれば、小さなお子さんからご年配の方まで幅広い層に支持されるようにタレの味を見直したい」と一度完成していたレシピを再考することにした妻沼さん。
それまでは、専門メーカーのタレを仕入れていたため、食研としても自社ブレンドのタレを使うのは、初の試みだったと言います。「タレだけで味を見たときにおいしくても、カツに染み込ませたときにおいしいとは限らない。当たり前のことですが、何度も何度も調整を繰り返しました」と、当時を振り返ります。
試作を重ねた結果、2種類の酢、2種類のしょうゆ、2種類の甘味(砂糖・みりん風調味料)を使い、それぞれの甘酸バランスをとることで、オリジナルの甘辛タレが完成しました。
当時はまだカツの衣にタレをしみ込ませるタイプの商品は一般的ではなく、そこもチャレンジだったと言います。
「揚げたての衣にタレをジュッと吸わせることによって、より味がしみ込みやすくなり、それに伴って食感もやわらかくなります。揚げたてのチキンカツにタレをつけるための機械を導入し、付着量の安定のために調整を繰り返し、工場と開発が一丸となって取り組みました」。
時間をかけて作り上げられた
「甘辛チキン南蛮カツ」独自の製造ライン
開発当時、加熱後のカツにタレをしみ込ませる味付きの商品はまだ珍しく、食研でも製造したことのないタイプの商品だったことから製造ラインを新設するところからスタート。
チキンカツにタレを付けるための機械を新たに導入し、タレを循環・ろ過する機械は別のラインのものを改良するなど、工場と開発の従業員が一丸となって「甘辛チキン南蛮カツ」専用の製造ラインを作り上げました。
甘辛チキン南蛮カツ 製造工程
1.検品
原料の国産鶏ムネ肉を一つひとつ丁寧に検品して、残骨などがないかを確認します。ここでは、ベテラン従業員と新人が交互に並ぶように配置され、見落としがないようにダブルチェックがされています。
2.充填・成型・凍結
短時間で味をなじませるために真空状態で肉に下味をつけた後、原木と呼ばれる棒状に成型します。充填機で1本1本充填された後、専用の凍結機で短時間で凍結させます。短時間で凍結させるのはドリップを最小限に抑え、肉のおいしさを閉じ込めるためです。
3.温度調整・スライス
原木をスライスできる温度まで温度調整を行います。この際、原木の外側と内側が均等に解凍されるように解凍方法を工夫しています。このことにより、原木の温度が均一になりスライスの安定性が保たれます。
4.打ち粉
皮が多すぎるものや割れているものを目視で取り除き、打ち粉をします。機械で打ち粉を付けた後、粉の付け過ぎや付着不良は人の手によって調整しています。打ち粉を均等につけることによって次工程のバッター液がのりやすくなります。
5.バッター付け
バッター液は、中種と衣の結着を良くし、ぬめりを抑える役割を担っています。自社開発した打ち粉とバッター液で肉のまわりにバリアを作り、肉から衣への水分移行をブロックする独自の技術により、レンジアップしてもサクッとした食感になります。
6.パン粉付け
オリジナルのパン粉は、繊維方向に粗めに挽くことでサクッとした食感を出す工夫がされています。油切れが良く、その分タレがしみ込みやすくなります。
7.加熱工程
微妙な温度調整を行い、表面をサクサクに揚げます。この段階では中まで熱を入れずに、肉の食感をしっとりさせます。その後別の加熱方法で中まで熱を通します。この2段階加熱調理によって、レンジアップした時に肉の食感がちょうどよく仕上がります。
8.タレ付け
チキンカツが熱いうちにタレのプールとシャワーを通して、上下からしっかりとタレ付けをします。その後、付けすぎたタレを落とし、付着量を調整して味のブレを無くしています。
9.凍結
スパイラル状の機械の中を通して、急速に凍結させます。冷凍しても衣にパン粉のツノが立っている状態が保たれています。短時間で凍結させるのは、レンジアップしたときの再現性をよくするためです。
10.トレー詰め
トレーに詰めるのはすべて従業員の手作業です。ツノ状に立っているパン粉を落とさずに詰めるのは機械では難しいため、目視検品も行いながら人の手で丁寧に詰められていきます。
11.包装
おなじみのパッケージで包装された「甘辛チキン南蛮カツ」は、異物や形状確認、印字やフィルムはがれを、機械と人の手を使って最終チェックした上で出荷されます。
多くの人が携わり、長い時間をかけて作り上げられた独自の製造ライン。その随所に見られるのは、さまざまな工夫です。たとえば、2段階加熱調理は、家庭でレンジアップして食べる時に肉の食感がちょうどよくなるようにと考えられたもの。また、タレづけの機械を導入した際には、衣へのタレの付着量を安定させるために何度も調整を行いました。時には工場内のフリーザーがタレだらけになるというアクシデントに見舞われながらも結果的には、一度しっかり付着したタレを落として味を調整するという方法がとられました。
オートメーション化されている一方で、それぞれの工程に人の目や手が入り、思っている以上に「手作り感」が感じられるのもこの商品の魅力。製造に携わるすべての人の情熱や努力、そして食研の確かな技術力によって「甘辛チキン南蛮カツ」は作られています。
2018年には肉量はアップ、衣は薄く!
でも甘辛タレの味は変えていません
多くの組合員さんから人気を博している「甘辛チキン南蛮カツ」。「うれしいことに多くの組合員さんに支持されている商品ですが、発売から10年が経過したのを機にさらに上を目指してリニューアルすることにしました」と妻沼さん。2017年の春に約1,000人の組合員さんを対象にアンケートを実施。
組合員さんへのアンケートでは、「満足している」という声が多いなか、こんな声も聞かれました。「もっとお肉を感じたい」、「衣の油っぽさが気になる」、「少し味が濃いかも」。この3点を改善すべく、リニューアルへの挑戦が始まりました。「もっとお肉を感じたい」という声には、国産鶏肉を増量(仕込時)し、肉の厚みが増えたことで、より肉の食感を感じられるようになりました。さらに、肉が厚くなったぶん衣を薄くすることで、油っぽさを解消。「衣の油が気になる」という声にもお応えすることができました。
今回のリニューアルに際して、妻沼さんが最も大切にしたのは、「味を変えないこと」でした。「多くの組合員さんから愛されている商品なので、リニューアルとはいえ味を変えるのは組合員さんを裏切ることになる。味を変えることなく、さらに上を目指してブラッシュアップするという感覚でした」と、妻沼さん。そのため、特製の甘辛タレの味を変えずに薄味にできないかと試行錯誤しましたが、衣を薄くすることで解決。「衣を薄くしたことで油っぽさが軽減されたのと同時に、肉と衣の比率が変更になったことで味の感じ方が変わり、結果的にちょうどいい味わいになったと思います」。
また、今回のリニューアルではさらに使い勝手をよくするために紙トレーにミシン目を入れました。このひと工夫によってトレーを簡単に切り取れるようになったので、冷凍庫での保管が便利になりました。
アレンジでどんどん広がる、
魅惑の「甘辛チキン南蛮カツ」ワールド
電子レンジで手軽に調理ができて、お弁当の一品に、夕食のおかずにと大活躍の「甘辛チキン南蛮カツ」。いろいろなアレンジを楽しめるのも魅力です。