牛にも、環境にも、人にもやさしい。それってとっても大事なことだと思う

若手生産者を応援し、持続可
能な畜産へ。
有機JAS認証を取得した牛肉
産直はなゆき農場有機牛

2023年からコープデリで有機JAS認証国産牛肉の取り扱いがスタートしました。その第1弾が「産直はなゆき農場有機牛」です。
コープデリ連合会が生産者とともに二人三脚で取り組んできた新たな枠組み、オーガニックビーフ誕生までの道のりをご紹介します。

コープデリ連合会は
有機JAS認証国産牛肉生産を
応援しています

北海道・足寄(あしょろ)町にある広大な放牧地で短角牛がのんびりと草をはんでいます。ここは、短角牛の繁殖から肥育を一貫して手掛ける北十勝ファームの一部門として有機畜産を行う「はなゆき農場」。有機飼料と、ストレスフリーな環境で短角牛を肥育しています。

放牧地で自由に草をはみ、のびのびと育つ短角牛

放牧地で自由に草をはみ、のびのびと育つ短角牛

コープデリと北十勝ファームとの関わりは、2017年まで遡ります。
「2017年に立ち上がった『北海道オーガニックビーフ振興会(HOBA)』に北十勝ファームとして参加するなかで、コープデリの畜産担当の方と話す機会がありました。そのときに『ヴィ・ナチュール』の誌面で、うちの短角牛を扱いたいというお話をいただいたのが最初です」と話すのは、北十勝ファームの代表・上田金穂(かねほ)さん。その後、畜産担当者から「有機牛も取り扱いたい」という要望があり、コープデリの支援を受けて、本格的に有機牛の生産に取り組むこととなりました。

北十勝ファーム 上田金穂さん

北十勝ファーム 上田金穂さん

有機JAS畜産物の生産事業は、有機専用の土地や設備の準備、飼料の確保など初期費用がかさみ、出生から出荷までの期間も通常の肉牛より長くかかるため、参入は簡単ではありません。そのため「持続可能な食料生産の取り組み」を継続的におこなってきたコープデリ連合会は、「有機JAS認証国産牛肉生産チャレンジ応援企画」として、北十勝ファームを支援することに乗り出しました。
その仕組みは、北十勝ファームで出生した子牛をコープデリが買い取り、はなゆき農場に育成を預託して預託料を毎月支払うことで経営の安定化を支援するというもの。この取り組みについて上田さんはこう話します。
「担当者の方とフローチャートを作り、いろいろ相談しながら今回の仕組みをつくり上げました。運用の面は支援していただけることになったので、はなゆき農場の土地を取得して、有機専用の牛舎や機械、餌、備品を確保するなど、手探りではありましたがいろいろな投資ができました。本当に良い仕組みを早い段階で整備できたことはありがたいと思っています」。
その結果、2021年秋に有機畜産物認定証を取得。北十勝ファームの一部門として有機畜産を行う「はなゆき農場」を設け、有機での短角牛の肥育が本格化しました。

「夏山冬里」方式でストレスフリーの
畜産を実現

繁殖から肥育まで、約600頭の短角牛の肥育一貫生産をしている北十勝ファームでは、短角牛の生産に「夏山冬里(なつやまふゆさと)」方式を取り入れています。
「春に母牛が牛舎の中で子牛を産み、子牛が1カ月から1カ月半くらいになったら母牛と一緒に放牧します。冬は11月くらいに放牧地の草がなくなってくるので牛舎に戻して離乳させ、お母さん牛は次の分娩に備えて体にたくさん栄養を蓄えていく。それを『夏山冬里』方式という言い方をしています」と上田さん。
雄大な自然の中に放たれた牛たちは、自由に草をはみ、駆けまわり、自然のサイクルに沿ってのびのびと育ちます。交配もまた、自然に委ねるため牛はストレスなく健康に過ごすことができます。

春から夏にかけて放牧する「夏山冬里」方式を取り入れています。

春から夏にかけて放牧する「夏山冬里」方式を取り入れています。

放牧によって運動量が増えても短角牛の肉質には影響はありません。一般的な牛の肥育は、サシ(脂)を作り出すことに力を入れますが、短角牛の魅力は赤身にあるからです。
「短角牛は、良質なタンパク源を供給する赤身で勝負する。赤身の肉の中に、細いサシを取り入れることは、僕は必要ないと思っています」と上田さん。
餌は、自家産牧草や自家産デントコーン(とうもろこし)を中心に、有機の醤油粕などをブレンド。配合は、日々の牛の健康状態に合わせて調整しています。
「海外から原料を調達するとトータルマイレージとして環境負荷が上がってしまうので、なるべく地域のものを食べさせることで環境負荷を減らせます。国際的に穀物事情が不安定な状況の中でも地域でしっかりした仕組みづくりをやっていることで、安定的に飼料を確保できています。日本国内で産業廃棄物として本来は捨ててしまうものを飼料に利用して循環型にしていく、手間はかかりますがそういうきっかけにもなるといいなぁと思っています」。

有機JASマークとは

JASマーク

有機JASマークは、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された食品を意味し、農産物や加工食品、畜産物に付けられるマークです。

若手生産者が担う「はなゆき農場」の未来

北十勝ファームの一部門として有機畜産を行う「はなゆき農場」を担当しているのは、中村梢乃(こずえ)さんです。大学卒業後、北十勝ファームに入社以来、短角牛の肥育に全力で取り組んできました。

「はなゆき農場」を担当する中村梢乃さん

「はなゆき農場」を担当する中村梢乃さん

「スタッフ全員が将来独立して社長になるように」という上田さんの考えもあり、今回、中村さんが全面的に「はなゆき農場」を任されることになりました。
「入社したときからずっと現場ばかりやってきたので、経営全体をみるというのが私の中では甘いと思っています。牛それぞれをよくしたいと思っているけれど、全体としてよくするにはどうしたらいいか、これから考えていかなければならない、と思っています」と中村さん。

有機区画の牛舎で自家産牧草や自家産デントコーン(とうもろこし)など独自配合の餌を与えています。

有機区画の牛舎で自家産牧草や自家産デントコーン(とうもろこし)など独自配合の餌を与えています。

“ストレスのない牛を育て、牛が幸せだと思えるような牛飼いをしたい”というのが中村さんの考え。そこに有機という条件がついたことで、中村さん自身、大きなプレッシャーを感じているといいます。
有機牛の生産には、日々の記録が不可欠。どんな餌を与え、どんな環境で、どのように育てているかを事細かに記録する必要があります。日々の忙しさの中で事務作業に時間をとられる分、肥育そのものに使える時間が減ってしまう。そのジレンマの中で有機牛の生産に取り組んでいます。
「今は有機飼料を確保することに力を注いでいて、まずはそれがうまく回っていくようにしたい。その上で、牛にとって草はとても重要な餌なので、草地の活性化、さらには土作りにも力を入れ、将来はここが日本の有機牧場の拠点になるようにしたいです」と、長期的な視点のもと有機牛の生産に取り組んでいます。

上田さんの指導のもと、経営についても考えながら有機牛の肥育に取り組んでいます。

上田さんの指導のもと、経営についても考えながら有機牛の肥育に取り組んでいます。

2023年春、はじめての「産直はなゆき農場有機牛」が出荷されました。
「正直、牛飼いとしてはまだ100点満点の肉質だとは言えませんが、3年後、5年後には組合員のみなさんに『有機の牛はおいしい牛肉だよね、なおかつJASがついた安全な牛肉だよね』と言ってもらえるようにしていくので、細く長くキャッチボールしながら僕らを育ててもらいたいですし、日本の有機牛の発展のためにも、買い続けて応援してもらいたいと思います」と上田さん。
はなゆき農場での有機牛の取り組みはまだまだ始まったばかり。コープデリ連合会はこれからも「持続可能な食料生産の取り組み」を応援していきます。

つくる責任、つかう責任

コープデリグループは商品の利用を通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。

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